健康の知恵「神経と関節」- 肝木編③ –

「肝木」が健やかだからこそ「体を動く」。

健康の知恵「神経と関節」- 肝木編③ –

 

前回は体の五行(五臓)のうち「肝木」と「筋」のお話しをしました。

今回は前回の「肝と筋」の補足と、体を動かすうえで大切な「神経」と「関節」の動きについて、所長のすね先生とアシスタントの2匹のネコ達との会話を通じて、より理解を深めて頂ければと思います。

 


【これまでの記事】


前回のおさらい

 

すね先生
それじゃあ、最初に前回のおさらいをしようか!
チョビ
えっと、確か「肝木」は朝活発に働くんだよね?

「肝木」がしっかりしていると、「筋」を元気に動かすことが出来て、「筋」が活発に働くことで「肝」もまた元気になるんだっけ。
すね先生
うん、よく覚えていたね!

だからチョビもモーも朝は伸びをする程度でも良いから、体や筋肉に刺激を与えてから動き始めると、体はより元気になるからね。
モー
分かりました。

今回は筋の補足と、体を動かすうえで大切な「神経」「関節」についてのお話を聞かせてください。

 

これまでの補足と「握」という働き

 

すね先生
前回までのお話で、「肝木」に関連する働きや器官、その1つとして「筋」との関係が分かったよね。

少しずつ内容が理解できてきたところで、東洋医学の古い書籍から「肝木」について大事な文章を見てみようか。
日頃の生活の知恵として役立てたい人はほどほどに。
東洋医学についてより深く勉強したい人や、鍼灸師を目指している人は読んでみてね。

岐伯対曰、東方生風。

風生木、木生酸、酸生肝、肝生筋、筋生心。

肝主目。

其在天為玄、在人為道、在地為化。

化生五味、道生智、玄生神。

神在天為風、在地為木、在体為筋、在蔵為肝、在色為蒼、在音為角、在声為呼、在変動為握、在竅為目、在味為酸、在志為怒。

怒傷肝、悲勝怒。風傷筋、燥勝風。酸傷筋、辛勝酸。

 

岐伯対えて曰く、東方は風を生ず。 

風は木を生じ、木は酸を生じ、酸は肝を生じ、肝は筋を生じ、筋は心を生ず。

肝は目を主る。

その天に在りては玄となし、人に在りては道となし、地に在りては化となす。

化は五味を生じ、道は智を生じ、玄は神を生ず。

神は天に在りては風となり、地に在りては木となり、体に在りては筋となり、蔵に在りては肝となり、色に在りては蒼となり、音に在りては角となり、声に在りては呼となり、変動に在りては握となり、竅に在りては目となり、味に在りては酸となり、志に在りては怒となる。

怒は肝を傷り、悲は怒に勝つ。

風は筋を傷り、燥は風に勝つ。

酸は筋を傷り、辛は酸に勝つ。

 

出典:黄帝内経「素問」陰陽応象大論篇

現代語訳「黄帝内経素問」上巻から引用

すね先生
少し内容が難しくなってしまうけれど、これまでの復習とこれからの説明で大切な内容だから解説するね。

東の方角からは太陽が昇り、風が生じます。
風の気は木気を盛んに生じさせ、木気は酸味を生じ、酸味は肝気を養い、肝気は筋を養い、筋膜が柔和になれば心を生じ養います。
ちなみに肝気は目に関連しています。

つまり、天空では風気となり、地上では木気となり、人体では筋となり、五臓では肝となり、五色では青となり、五音では角となり、五声では呼となり、病変の現れは握となり、七竅(人の顔にある七つの穴)では目となり、五味では酸となり、情志の変動では怒となります。

怒りは肝を損なうが、悲しみは怒りを抑えます。
風は筋を損なうが、乾燥は風を抑えます。
酸味は食べ過ぎると筋を損ないますが、辛味は酸味を抑えることができます。

文章が長くなってしまったけど、どうかな?なんとなく分かったかな?
 
チョビ
まだ始まったばかりなのに頭がパンクしそうだよ。。。
モー
内容的によく分からないところもありますが、これらが全て「肝木」と関連していること。

そして、前回の「筋」の関連で言えば、
「肝気が筋を養っている。」
「風は筋を損なう。」
「酸味の食べ過ぎは筋を損なう。」
ということは分かりました。
すね先生
そうだね。

まだ説明していないこともあるから、まずはモーが言ってくれたように
「これら全て肝木に関連している」
「肝気が筋を養っている。」
「風は筋を損なう。」
「酸味の食べ過ぎは筋を損なう。」
この4つが分かってくれればいいかな。
チョビ
なんだかまだよく分からないけれど。。。

この4つ以外にはどこを見たらいいの?
すね先生
前回までの「筋」と関連するところで言うと、「病変の現れは握となり」というところを見て欲しいな。

「病変の現れは握となり」
これはどういうことかというと、「肝木」に変動、病が起こると、体の弱い部分や使い過ぎな場所に「凝り」や「筋の緊張」「硬直」といった変化が現れると言っているんだ。

「握」とは、「握手」という言葉があるように、「にぎる」「つかむ」といった意味や、「自分のものにする」といった意味があるんだ。
これを筋の変化としてみると、「硬くする、固める」→「緊張」→「凝り」「つる」「けいれん」「奮え(ふるえ)」といった変化としてみることが出来るんだ。
モー
つまり、運動をし過ぎて足が足がつったり、けいれんしたりした時は、「肝木」の病変ということですね。
チョビ
上の長い文章にあるけど
「怒った時に手を握りしめてプルプル震える。」
「酸っぱいものを食べて身震いする。」
といった変化も「肝木」の働きということ?
すね先生
心配だったけど、2匹ともある程度は分かっているようだね。

これらを丸暗記するのは大変だけど、「肝木」の関連と体における変化がなんとなくイメージ出来たんじゃないかな?

これだけでもお腹いっぱいになってしまいそうだけれど、今回は「筋」以外にも体を動かすうえで大切な「神経」や「関節」と「肝木」の関連を話していくね。

 

「将軍」は「神経」を使って指令を与える

 

すね先生
以前の記事の中にあった「肝者、将軍之官、謀慮出焉。」という文章を覚えているかな?
チョビ
うーん、そんなのあったかもね。
すね先生
「肝木」は知恵と勇気にたけた将軍様に例えられて、様々な計画や判断、考慮をするときに力を発揮すると言われるだけど、これを「指令・指示」する働きと考えると、「神経」の働きに似ているよね。

現代医学的には筋肉を動かすには神経の(電気)信号が必要なんだけど、前回までに学んだ「肝木が弱ると筋を動かす働きが弱くなる。」というのは、筋という器官もだけど、それを動かす「神経」も指していることがわかるよね。

「神経」というもの自体は「腎水」が主っているんだけど、その神経を伝わる指令。
「筋肉を動かせ」「体を起こそう」「腕を上げよう」「走ろう」などという指令は「肝木」の働きがあってこそなんだ。

大本は「腎水」。行動は「肝木」。
モー
では先生。
例えば、病気で「ギックリ腰で痺れがある。」なんて言う場合はどういった状態なんですか?
すね先生
一概には言えないけれど、「神経」という構造を傷めてしまっている場合には「腎水」に目を向ける必要があるんだ。
だけど、「痺れ」という状況は「神経」を傷めた構造的な問題に加えて、「肝木」が主る「神経の指令=感覚」の問題でもあるから、治療の中心が「肝木」になる場合は多いかもね。
チョビ
「神経」といっても現代医学の様に簡単じゃないんだね。

「体を動かす」は「関節を動かす」

 

すね先生
「肝木」と「神経」の関係を話してきたけど、「体を動かす。」時に「筋肉」と「神経」以外に体の器官で必要なものは何か分かるかい?
モー
体を動かす時には、体中にある「関節」ですね。
すね先生
その通りだね。

「筋」は筋肉や靭帯として、関節をまとって骨と骨とを繋ぎ、筋肉が動くことで関節が曲げ伸ばしされる。

「筋」が元気であれば関節も正常に曲げることができ、「筋」が緊張していれば曲げられない。
また筋が弛緩していれば、関節は支える力が減りがくがく不安定になってしまう。

「膝痛い。」といった場合に、
腫れが引きにくくなっていたり、骨が変形していたりするとまた違ったりするけど、「筋(筋肉、靭帯)」がうまく動かないことで痛みが出ている時には「肝木」が施術の中心になったりするんだ。
また、捻挫や脱臼といった場合にも「筋」を中心とした「肝木」が問題となっている場合があるんだ。

以前の記事に、肝は「罷極の本」という文があったと思うけど、「肝木」に心身の緊張による疲労が溜まり筋が硬くなる、動きにくくなると、背骨の関節がうまく動かなくなり、曲がったり固くなったりするんだ。
チョビ
ということは、「膝が痛い」「足首が痛い」なんて時は、痛い関節だけ触っていてはいけないんだね!
すね先生
その通り!
鍼灸における施術の組立についてあまり話をしていなかったけれど、「東洋医学」「鍼灸」ではこういった事を考えながら全身を診て、根本的な原因を良くすることを考えるんだ。
 

 

健康の知恵「神経と関節」- 肝木編② –のまとめ

 

  • 「肝木」は神経の「指令」「感覚」を主る
  • 「肝木」は「関節」の動きも主る
  • 「東洋医学」「鍼灸」ではこういった事を考えながら全身を診て、根本的な原因を良くすることを考える
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