冬の過ごし方 – 冬三月。秩父は冬五月? –

冬三月。秩父は冬五月? – 冬の過ごし方 –

秩父地方では、

毎年12月3日に行われる「秩父夜祭」を境に、ぐっと寒さが厳しくなります。

今年は新型コロナの影響で「秩父夜祭」は規模を縮小し、花火も控えめでしたが

例年同様、最低気温が氷点下を記録するようになり

秩父の長い、長い寒い季節へ本格的に突入します。

今回は

「冬の訪れ」に絡めて、

東洋医学の世界からみた冬の過ごし方。

冬の時季の養生について簡単に綴ってみようと思います。

どこの鍼灸院でも耳にする「冬の過ごし方」

はじめにお話ししておきますが

今回のお話しは特別なものではなく

東洋医学の理論に沿って、

体の不調を考えたり、施術の方針を立てている鍼灸院さんでは

どこでも耳にする

「鍼灸師の常識」

 

ですから

うちに施術にいらっしゃっている方は皆さん耳にしているでしょうし

東洋医学に興味をもって、この記事をご覧になられた方も

耳にしたことがあるかもしれません。

ですが

大変な季節を乗り越えるうえで大切なことだと思いますので

改めて、

日々の過ごし方を見直すきっかけにしていただければ幸いです。

当所でお話ししていること

当所では冬の過ごし方について

こういったことをよくお話ししています。

● 冬の間は活発な動きはほどほどに。
● 今の状態のしっかり保つことが大切。
● 寝不足はほどほどに、睡眠を十分にとる。
● 冬の時季のトラブルは厄介

 

これらの内容について

古典からその理由を見てみましょう。

古典を見てみよう ~四気調神大論篇~

【原文】

冬三月、此謂閉蔵。水冰地坼。無擾乎陽。

早臥晩起、必待日光、使志若伏若匿、若有私意、若已有得。

去寒就温、無泄皮膚、使気亟奪。

此冬気之応、養蔵之道也。

逆之則傷腎、春為痿厥、奉生者少。

 

【現代語訳】

冬の三箇月は万物の生活機能が潜伏閉蔵する季節である。

だから河の水は氷り、地面は凍って裂ける。

この時期には、人は陽気をかき乱してはならない。

少し早く眠り、少し遅く起きるべきであり、起床と就寝の時間は、日の出と日の入りを基準とするがよい。

心を埋め伏し、しまい隠しているかのように安静にさせる。

ちょうど人に話しにくい私情があるかのように。

また、すでに秘密をつかんだような愉快な気分で、

厳寒を避け、温暖に保ち、皮膚を開いて汗を出すようなことをして、閉蔵している陽気に影響を受けさせてはならない。

これがつまり、冬に適応して「蔵気」を養うという道理である。

もし、この道理に反すると、腎気を損傷し、来春になって痿厥の病を発生し、人が春の生気に適応するという能力を減少させてしまう。

 

出典:黄帝内経「素問」四気調神大論篇

現代語訳「黄帝内経素問」上巻から引用

 

これらの文は

冬になると、

寒さに対して熱を逃がさないように体を縮こまらせ

心身の動きが停滞し、内向きに働く。
(陰の働きが強まり、内側に向く力が強まる。)

だからこそ、

体のぬくもりであり、活発力(発散力)である、陽の気を乱してはいけないこと。

野生動物が冬眠するように、他の季節よりも体力を消耗させないように努めること。

そして

冬の時季に無茶をし気力、陽気を損なうと

春になって心身の働きがついていかず、

せっかく温かくなったのに、体調を崩し活発に動くことができなくなってしまう。

その様なことを言っています。

 

まさに

私が患者さんの皆さんにお伝えしていることですね。

では、

冬の方が痩せやすかったり、

運動では体力を付ける時季だと言ったりしますが

それらについてはどう考えたらいいのか。

秋までの元気・体力が大事

これは先生によって解釈に幅があるかと思いますが

幾つかの要素の状態によって

動いても大丈夫なのか。

動いても大丈夫だけど気を付ける必要があるのか。

できるだけて動きすぎない方がよいのか。

など、個々に分かれていると判断しています。

 

大まかに注意した方がよさそうな方を言うとしたら

以下に該当するような方には、特に注意して生活指導をしています。

① 秋に心身に無理をかけた、体調を崩した方。
② 体力が虚損しているかた。気虚・血虚の方。
③ 陽気が虚損しやすいかた。陽虚の方。
冬なのに何故秋なの?

東洋医学の理論を大切に施術している鍼灸師は

その方の1週間後、1ヶ月後の状態は勿論

次の季節、次の次の季節の体調なども考えて施術をします。

それは

先ほど引用した鍼灸の古い書物

「黄帝内経「素問」四気調神大論篇」にも明記されているように

東洋医学、鍼灸というものが、

季節の変化、人の体の変化は常に影響しあい

一連の流れとして、人の健康に左右すると考えているためです。

秋と冬の関係についても次のような一文があります。

 

【原文】

秋三月、此謂容平、天気以急、地気以明。

早卧早起、与雞俱興、使志安寧、以緩秋刑。

収斂神気、使秋気平、無外其志、使肺気清。

此秋気之応、養収之道也、逆之則傷肺、冬為飧泄、奉蔵者少。

 

【現代語訳】

秋の三箇月は、万物が成熟し、収穫の季節である。

天気はすでに涼しく、風の音は強く急で、地気は清粛として、万物は色を変える。

人々は当然早寝早起きすべきである。

鶏と同じように、夜明けとともに起き、空が暗くなると眠り、心を安らかに静かにさせて、秋の粛殺に気候の人体に対する影響を緩和させ、神気を収斂して、秋の粛殺をきを和ませる。

心を外にはたらかせないで、肺気を清浄に保持しなければならない。

これが秋に適応して、「収気」を保養する道理である。

もし、道理に反すると、肺気を損傷し、冬にな手食物を消化しきれないで下痢を病んでしまう。

人が冬の潜伏閉蔵するという気に適応する能力を減少させてしまうのである。

 

出典:黄帝内経「素問」四気調神大論篇

現代語訳「黄帝内経素問」上巻から引用

 

秋の過ごし方によって

冬の時季があることで大切に働く

「体力を溜めてしまっておく」という働きを低下させてしまう。

それは睡眠や食事をして

体力(気力)を回復させても、すぐ消耗してしまうということで

これは冬の季節ばかりの影響ではなく、

暖かい季節になって以降にも影響としてあらわれ、

活動力の低下に繋がってしまう。

気虚・血虚・陽虚って?

以前綴った

「東洋思想」あって活きる鍼灸

という記事を合わせて読んで頂くと理解が深まると思いますが、

簡単に

精神的もしくは肉体的、または両方とも疲れている人。

寒さに弱い人。

活発に動く元気がない人。

眠気が強い人。

体がだるい人。

など、元気・活動力が落ちているような場合。

と整理していただければと思います。

野生動物はよくわかってるけど

今回、

東洋医学の世界における「季節の過ごし方」について綴ってきましたが、

これらを守っていくことは簡単ではありません。

それこそ、

自然のなかで、自然の働きに従って生きる野生動物には当たり前のことかもしれませんが、

様々な心の働き、環境のなかで過ごしている現代人には難しいことだと思っています。

ただ、難しいことだとしても

日々生活するなかで役立てることはできます。

無茶をせず、注意するきっかけにはなります。

ですから、

今回のお話しによって、ほんの少しでもご自身やご家族の方の生活を見直すきっかけとして頂ければ幸いです。

 

▼ 補 足 ▼

季節の過ごし方について綴られている「四気調神大論篇」。

その他の自然の流れ、四季の過ごし方についても

参考までに綴っておきますのでご興味がある方はご覧ください。

【原文】

春三月、此謂発陳、天地倶生、万物以栄。

夜臥早起、広歩於庭。被髪緩形、以使志生。

生而勿殺、予而勿奪、賞而勿罰。

此春気之応、養生之道也。

逆之則傷肝、夏為寒変、奉長者少。

 

【現代語訳】

春の三ヶ月は、万物が古いものを推し開いて、新しいものを出す季節であり、天地間の生気が発動して、ものみなすべてが生き生きと栄えている。

人々は少し遅く寝て少し早く起き、庭に出てゆっくりと歩き、髪と解きほぐし、体を伸びやかにし、心持ちは活き活きと生気を充満させて、生れたばかりの万部つと同様にするよい。

ただひたすらその生長にまかせるべきで、殺害してはならない。

ただひたすら成長を援助するべきで、剥奪してはならない。

大いに心をはげまし、目を楽しませるべきで、体をしいたげてはならない。

これだ春に適応し、「生気」を保養する道理である。

もし、この道理に反すると、肝気を損傷し、夏になって変じて寒性の病を生じ、人体がもっている夏の盛長の気に適応するという能力を減少させてしまう。

 

出典:黄帝内経「素問」四気調神大論篇

現代語訳「黄帝内経素問」上巻から引用

【原文】

夏三月、此謂蕃秀。天地気交、万物華実。

夜臥早起、無厭於日。

使志無怒、使華英成秀、使気得泄、若所愛在外。

此夏気之応、養長之道也。

逆之則傷心、秋為痎瘧、奉収者少、冬至重病。

 

【現代語訳】

夏の三箇月は万物が繁栄し、秀麗となる季節で、天の気が下降し地の気は上昇して、天の気と地の気は上下交わり合い、万物も花開き実を結ぶ。

人々は少し遅く寝て少し早く起きるべきである。

夏の日の長さ、暑さを厭うことなく、気持を愉快にすべきで、怒ってはならない。花のある植物と同じように満開にさせ、体内の陽気を外に向かって開き通じ発散することができるようにさせるのである。

これがつまり、夏に適応し「長気」を保養する道理である。

もし、この道理に反すると、心気を損傷し、秋になって瘧疾を発することになり、「収気」に適応する能力が減少して、冬になると再び病を発する可能性がある。

 

出典:黄帝内経「素問」四気調神大論篇

現代語訳「黄帝内経素問」上巻から引用

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