健康の知恵
「心の性格は羊?」
– 心火編⑥ –
前回は
「心火」の性質を考えたうえで「心の働き」についてお話しをしました。
今回は
「心火」の体質を持つ人の「性格」について
所長のすね先生とアシスタントの2匹のネコ達との会話を通じて、
より理解を深めて頂ければと思います。
【これまでの記事】
- 健康の知恵「イコール心臓ではないよ」- 心火編① –
- 健康の知恵 「『心』の『汗』を流そう!とか『熱』っ『苦』しい」 – 心火編② –
- 健康の知恵 「『舌』の状態で長生きかわかる?」- 心火編③ –
- 健康の知恵「『顔色がいい』ってどういうこと?」- 心火編④ –
- 健康の知恵「笑いで心を温める」- 心火編⑤ –
前回のおさらい
「木があるから火が生まれる。」「感動があるから喜びが生まれる。」
感情のコントロールを行う肝木が正常に働いていれば、ちゃんと感動という心の働きが生まれ。
そして、その働きをもとに心火の働きが高まり喜びというものが生まれる。
そん感じだったよね!
モーはどうかな?
喜悦は心火の高まりであり、喜悦の感情が外に現れてた「笑い」はより心火を元気にする。
そして
心火の喜悦、笑いは悲しみの感情を抑える働きがあるんでしたよね?
今回は前回の心(こころ)の働きから話を広げて心火の性格や特徴をお話ししていくよ。
陽性強くも礼儀正しき人
確かに「陽性」の働きを存分に発揮するとそんな性格になりえるね。
ただ、「五行」の純粋な性格はちょっと違うんだ!
神礼なる人って?
過去記事:五行の分類
まず五神だけど古典にはこう書いてあるよ。
五蔵所蔵。
心蔵神。肺蔵魄。肝蔵魂。
脾蔵意。腎蔵志。
是謂五蔵所蔵。
五蔵の蔵する所。
心は神を蔵す。肺は魄を蔵す。肝は魂を蔵す。
脾は意を蔵す。腎は志を蔵す。
是れを五蔵の蔵するところと謂う。
出典:黄帝内経「素問」
現代語訳「黄帝内経素問」上巻から引用
心が神と関係することは、最初に心火のお話しをしたときにもお話ししたよね。
過去記事:健康の知恵「イコール心臓ではないよ」- 心火編① –
「神」というのは様々な意味合いをもつけれど、
東洋医学、体においては「神様」ではなく「君主」「最高位」にあたる指令をだす働き。
また「五常」については、
五常は「五徳」とも言われて、以前にもお話しした「儒教」との関連が深いんだ。
「五常」「五徳」はとても大切な内容だからまた後で詳しくお話しをするとして。。。
「礼」というのは、
「礼儀」という言葉からマナーをイメージすると思うけど、儀式に使われる「儀」という字が付く言葉があるくらいだから、「礼」という字は元々神聖な意味を含む字なんだ。
「礼」意味:
①秩序ある社会生活を営むうえでの定まった作法や儀式。のり。「礼儀」「礼節」
②うやまう。敬意をはらう。「礼賛」「拝礼」
③感謝の気持ち。「礼状」「謝礼」
漢字ペディアから引用
旧字体は神の意を表す示と、豊 れい とから成る。
豊が音を表わし、ふみ行なう意の語源(履)からきている。
神に向かって儀礼を履行する意。ひいて、いっぱんに儀礼の意となった。
角川漢和中辞典から引用
旧字は醴に作り、豊声。豊は醴。
その醴酒を用いて行う饗醴などの儀礼をいう。
字通 [普及版]から引用
ちゃんとした礼儀正しい人って感じがする!
羊のごとき人って?
とても長い一節だから、説明しなかった肝木のところと心火その続きにあたる心火のところを説明するね。
帝曰、五蔵応四時、各有收受乎。岐伯曰、有。
東方青色、入通於肝、開竅於目、蔵精於肝、其病発驚駭。
其味酸、其類草木、其畜鶏、其穀麦。
其応四時、上為歳星。是以春気在頭也。
其音角、其数八、是以知病之在筋也。其臭臊。
南方赤色、入通於心、開竅於耳、蔵精於心。故病在五蔵。
其味苦、其類火、其畜羊、其穀黍。
其応四時、上為熒星。是以知病之在脈也。
其音徴、其数七、其臭焦。
帝曰く、五蔵 四時に応じ、各おの收受あるか。岐伯曰く、有り。
東方は青色、入りて肝に通じ、竅を目に開き、精を肝に蔵し、其の病は驚駭を発す。
其の味は酸、其の類は草木、其の畜は鶏、其の穀は麦。
其の四時に応ずるや、上歳星たり。是を以て春気は頭に在るなり。
其の音は角、其の数は八、是を以て病の筋に在るを知るなり。その臭は臊。
南方は赤色、入りて心に通じ、竅を耳に開き、精を心に蔵す。故に病は五蔵に在り。
其の味は苦、其の類は火、其の畜は羊、其の穀は黍。
其の四時に応ずるや、上熒惑星たり。是を以て病の脈に在るを知るなり。
其の音は徴、其の数は七、其の臭は焦。
出典:黄帝内経「素問」
現代語訳「黄帝内経素問」上巻から引用
心火その腑は小腸なり。
陰経は栄に出で、陽経は経に出づ。神・礼にして徴音を発する。
羊の如き人、夏の昼、夏の昼、南方より来る、暑邪、舌・血脉・毛を犯す時は、
その病、臭に出づ、その色は赤く、その臭は焦く、その味は苦し。
言く如き声を発して汗を流す。みだりに笑って云る(或いは憂う)。
杏・薤・黍を好み、生れる数は二、成る数は七、丙・丁これを主る。
経絡治療学原論 上巻 経絡治療臨床講座
第六章 五臓の色体表から引用
その中で注目してほしいのは
「其の(その)畜は羊」、「羊の如き(ごとき)人」ってところ。
意味が分かるかな?
故事成語に「羊頭狗肉」という言葉がありますが、それが関係していますか?
良く知っていたね!
同じ意味としては「羊頭馬脯」などがあるけど、
外見は立派だけど、中身がそれにともなわない、見かけと中身が一致していない。という喩えだよね。
見かけに中身がともなわない意味で、どうして羊とか犬とか馬とかの肉が出てくるの?
看板には羊の頭をかけながら、実際には粗悪な犬や馬の肉を売る。という状況なんだけど、
先生も意味を深堀しきれていないけれど、「大」きい「羊」は「美しい」という字の成り立ちからも、
当時の中国では「羊」をとても良いもの、ポジティブな象徴、イメージをもっていたのかもしれないね。
言葉としてはネガティブな悪い意味として使われる場合がありますよね。
そういったポジティブイメージからも、「君主」に位置する「心火」に位置する家畜「五畜」として「羊」を配置したのかもしれないね。
「羊の如き人」というのはどう人なの?
この文章を書いた先生はこういった解釈をしているんだ。
羊は五畜のうちで最も尊い動物として神に供えられる。心細かく清潔で礼儀正しい動物であるから、これに類似した人物が想像される。
経絡治療学原論 上巻 経絡治療臨床講座
第六章 五臓の色体表から引用
羊の性格のイメージとしては、
群れになって「臆病」って感じで、清潔かどうかは専門家に聞いてみないとなんともね。。。
でも、この書籍を書いた先生としては経験上「羊は心細かく清潔で礼儀正しい動物」と思ったんだろうね。
臨床ではどうやって応用しているの?
まず、前回の喜びや笑いといったことは、
「鬱(うつ)」を代表として精神的な不調を抱えた方の鍼療方針を立てるときや、経過の判断として考える場合があるよね。
例えば「鬱(うつ)」という病があっても、その状態によって鍼療方針が様々なのはなんとなくわかるかな?
そのバランスの崩れ方を把握するうえで、心火が不調の主体となる場合もあれば、肝木やこれからお話しする肺金、腎水といった五行の不調が原因となる場合があるだ。
その中で、「鬱(うつ)」という病で「喜び」や「笑い」といった感情の消失は、心火にスムーズに気血が巡っていなことによる不調の一端として考え鍼療方針を組み立てたり、予後の判断をおこなったりをするよね。
あとは、心身ともに疲労困憊なのにとにかく頻繫に笑っている人ような人がいるんだ。
疲労困憊だけどなんとか動かなくてはいけないと、心火を高ぶらせている状態なんだけど、その場合には心火を休ませるような労わるような処置を考えるよね。
先生は実際に診たことが無いからあくまでも理論的な推測だけれど。。。
「心火」がしっかりすることで礼儀正しさが生まれるということは、礼儀正しくない行いをしてばっかりいる人、法律に触れる触れない関係なく良いとはいえない行いをする人は、もしかすると心火の働きに問題を生じているのかもしれないね。
それが問題ではない場合もあるし、直接体の不調と繋がっていない場合もあるけれど、鍼療していくことでその頻度が減ったりして、それまでよりも逞しい感じになる方もいるよね。
病とは全然関係ないと思ったりするだろうけど、東洋医学ではそういった状態もお体を知るうえでとても大切な情報なんだ。
健康の知恵
「心の不調の音がする」- 心火編⑥ -のまとめ
- 心火の性格は「礼儀正しさ」
- 性格や癖、病とは全然関係ないと思うことも東洋医学ではとても大切な情報