健康の知恵「心の性格は羊?」- 心火編⑥ –

あなたのイメージする心火の性格は?

健康の知恵
「心の性格は羊?」
– 心火編⑥ –

 

前回は

「心火」の性質を考えたうえで「心の働き」についてお話しをしました。

今回は

心火」の体質を持つ人の「性格」について

所長のすね先生とアシスタントの2匹のネコ達との会話を通じて、

より理解を深めて頂ければと思います。

 

【これまでの記事】

 

前回のおさらい

 

すね先生
それじゃ、前回のおさらいをしてみようか!
チョビ
前回は「心火」の心臓の働きではなく、心の話をしたんだよね!

「木があるから火が生まれる。」「感動があるから喜びが生まれる。」
感情のコントロールを行う肝木が正常に働いていれば、ちゃんと感動という心の働きが生まれ。
そして、その働きをもとに心火の働きが高まり喜びというものが生まれる。

そん感じだったよね!
すね先生
うん、そんな感じだよ。

モーはどうかな?
モー
陽性の性質が強い「心火」だけあって、明るいイメージの心の働きですよね。
喜悦は心火の高まりであり、喜悦の感情が外に現れてた「笑い」はより心火を元気にする。
そして
心火の喜悦、笑いは悲しみの感情を抑える働きがあるんでしたよね?
すね先生
しっかり復習できているね。

今回は前回の心(こころ)の働きから話を広げて心火の性格や特徴をお話ししていくよ。

 

陽性強くも礼儀正しき人

 

すね先生
「心火」の体質はどんな性格?と聞かれたらどんな性格をイメージするかな?
チョビ
うーん、心「火」と言われるくらい陽性の働きが強いわけだから、熱血で勢いのある性格とかかな?
すね先生
これまでのお話しからするとそんなイメージになるよね。
確かに「陽性」の働きを存分に発揮するとそんな性格になりえるね。

ただ、「五行」の純粋な性格はちょっと違うんだ!

 

神礼なる人って?

 

モー
注目すべきは、五行の表にある「五神」や「五常」などがポイントになるんですかね?
過去記事:五行の分類
すね先生
うん、さすがモーだね。
まず五神だけど古典にはこう書いてあるよ。

五蔵所蔵。

心蔵神。肺蔵魄。肝蔵魂。

脾蔵意。腎蔵志。

是謂五蔵所蔵。

 

五蔵の蔵する所。

心は神を蔵す。肺は魄を蔵す。肝は魂を蔵す。

脾は意を蔵す。腎は志を蔵す。

是れを五蔵の蔵するところと謂う。

出典:黄帝内経「素問」 宣明五気篇

現代語訳「黄帝内経素問」上巻から引用

すね先生
五臓がそれぞれおさめる働きということ。
心が神と関係することは、最初に心火のお話しをしたときにもお話ししたよね。
過去記事:健康の知恵「イコール心臓ではないよ」- 心火編① –

「神」というのは様々な意味合いをもつけれど、
東洋医学、体においては「神様」ではなく「君主」「最高位」にあたる指令をだす働き。

また
「五常」については、
五常は「五徳」とも言われて、以前にもお話しした「儒教」との関連が深いんだ。
「五常」「五徳」はとても大切な内容だからまた後で詳しくお話しをするとして。。。
「礼」というのは、
「礼儀」という言葉からマナーをイメージすると思うけど、儀式に使われる「儀」という字が付く言葉があるくらいだから、「礼」という字は元々神聖な意味を含む字なんだ。

「礼」意味:

①秩序ある社会生活を営むうえでの定まった作法や儀式。のり。「礼儀」「礼節」

②うやまう。敬意をはらう。「礼賛」「拝礼」

③感謝の気持ち。「礼状」「謝礼」

漢字ペディアから引用

旧字体は神の意を表す示と、豊 れい とから成る。

豊が音を表わし、ふみ行なう意の語源(履)からきている。

神に向かって儀礼を履行する意。ひいて、いっぱんに儀礼の意となった。

角川漢和中辞典から引用

旧字は醴に作り、豊声。豊は醴。

その醴酒を用いて行う饗醴などの儀礼をいう。

字通 [普及版]から引用

すね先生
これらの意味からなんとなくどのような性格な人なのか連想できるかな?
チョビ
なんだか分かったような、分からないようなだけど。。。
ちゃんとした礼儀正しい人って感じがする!
すね先生
うん、そんなイメージで良いと思うよ!

 

羊のごとき人って?

 

すね先生
肝木の時には説明しなかったのだけれど、五臓の分類訳について古典にはこう書いてあるんだ。
とても長い一節だから、説明しなかった肝木のところと心火その続きにあたる心火のところを説明するね。

帝曰、五蔵応四時、各有收受乎。岐伯曰、有。

東方青色、入通於肝、開竅於目、蔵精於肝、其病発驚駭。

其味酸、其類草木、其畜鶏、其穀麦。

其応四時、上為歳星。是以春気在頭也。

其音角、其数八、是以知病之在筋也。其臭臊。

 

南方赤色、入通於心、開竅於耳、蔵精於心。故病在五蔵。

其味苦、其類火、其畜羊、其穀黍。

其応四時、上為熒星。是以知病之在脈也。

其音徴、其数七、其臭焦。

 

帝曰く、五蔵 四時に応じ、各おの收受あるか。岐伯曰く、有り。

東方は青色、入りて肝に通じ、竅を目に開き、精を肝に蔵し、其の病は驚駭を発す。

其の味は酸、其の類は草木、其の畜は鶏、其の穀は麦。

其の四時に応ずるや、上歳星たり。是を以て春気は頭に在るなり。

其の音は角、其の数は八、是を以て病の筋に在るを知るなり。その臭は臊。

 

南方は赤色、入りて心に通じ、竅を耳に開き、精を心に蔵す。故に病は五蔵に在り。

其の味は苦、其の類は火、其の畜は羊、其の穀は黍。

其の四時に応ずるや、上熒惑星たり。是を以て病の脈に在るを知るなり。

其の音は徴、其の数は七、其の臭は焦。

出典:黄帝内経「素問」 金匱真言論篇

現代語訳「黄帝内経素問」上巻から引用

すね先生
そして、先生が学んだ鍼の流派の書籍にはね、心火をこんな感じで説まとめているんだ。

心火その腑は小腸なり。

陰経は栄に出で、陽経は経に出づ。神・礼にして徴音を発する。

羊の如き人、夏の昼、夏の昼、南方より来る、暑邪、舌・血脉・毛を犯す時は、

その病、臭に出づ、その色は赤く、その臭は焦く、その味は苦し。

言く如き声を発して汗を流す。みだりに笑って云る(或いは憂う)。

杏・薤・黍を好み、生れる数は二、成る数は七、丙・丁これを主る。

経絡治療学原論 上巻 経絡治療臨床講座
第六章 五臓の色体表から引用

すね先生
現代の言葉の表現と少し異なるから読みにくいかもしれないけれど、これまでのお話しからなんとなく意味は分かるんじゃないかな?

その中で注目してほしいのは
「其の(その)畜は羊」、「羊の如き(ごとき)人」ってところ。
意味が分かるかな?
モー
「五畜」にあたる部分ですよね。
故事成語に「羊頭狗肉」という言葉がありますが、それが関係していますか?
チョビ
すね先生が言っていることもよく分からないし、モーが言っている羊の頭がどうのとかいう気持ち悪い言葉も知らないよ~
すね先生
「羊頭狗肉」
良く知っていたね!
同じ意味としては「羊頭馬脯」などがあるけど、
外見は立派だけど、中身がそれにともなわない、見かけと中身が一致していない。という喩えだよね。
チョビ
狗肉というのは犬の肉ってことだよね?
見かけに中身がともなわない意味で、どうして羊とか犬とか馬とかの肉が出てくるの?
すね先生
「羊頭狗肉」「羊頭馬脯」の意味としては、
看板には羊の頭をかけながら、実際には粗悪な犬や馬の肉を売る。という状況なんだけど、
先生も意味を深堀しきれていないけれど、「大」きい「羊」は「美しい」という字の成り立ちからも、
当時の中国では「羊」をとても良いもの、ポジティブな象徴、イメージをもっていたのかもしれないね。
モー
今のペットとしての「犬」の印象はかわいいし、頭がいいイメージですが、
言葉としてはネガティブな悪い意味として使われる場合がありますよね。
すね先生
当時中国の羊と今の羊ではもしかすると少し違うかもしれないけれど、
そういったポジティブイメージからも、「君主」に位置する「心火」に位置する家畜「五畜」として「羊」を配置したのかもしれないね。
チョビ
じゃあすね先生。
「羊の如き人」というのはどう人なの?
すね先生
先生はポジティブなイメージから「立派な人」という、「礼」のイメージと近い解釈をしているけど、
この文章を書いた先生はこういった解釈をしているんだ。

羊は五畜のうちで最も尊い動物として神に供えられる。心細かく清潔で礼儀正しい動物であるから、これに類似した人物が想像される。

経絡治療学原論 上巻 経絡治療臨床講座
第六章 五臓の色体表から引用

チョビ
羊って心細かく清潔なの?
すね先生
うーん、先生はそのイメージは無いんだよね(笑)
羊の性格のイメージとしては、
群れになって「臆病」って感じで、清潔かどうかは専門家に聞いてみないとなんともね。。。
でも、この書籍を書いた先生としては経験上「羊は心細かく清潔で礼儀正しい動物」と思ったんだろうね。

臨床ではどうやって応用しているの?

 

モー
すね先生、今回は心火性格についてお話しを聞きましたが、お仕事では役に立つ場面ってあるんですか?
すね先生
なかなか鋭い質問だね。
まず、前回の喜びや笑いといったことは、
「鬱(うつ)」を代表として精神的な不調を抱えた方の鍼療方針を立てるときや、経過の判断として考える場合があるよね。

例えば「鬱(うつ)」という病があっても、その状態によって鍼療方針が様々なのはなんとなくわかるかな?
モー
はい、五行のバランスが崩れているかによっても対処が違うでしょうし、陰陽の崩れ方なども考慮に入れなくてはいけないんですものね。
すね先生
そうだね。
そのバランスの崩れ方を把握するうえで、心火が不調の主体となる場合もあれば、肝木やこれからお話しする肺金、腎水といった五行の不調が原因となる場合があるだ。
その中で、「鬱(うつ)」という病で「喜び」や「笑い」といった感情の消失は、心火にスムーズに気血が巡っていなことによる不調の一端として考え鍼療方針を組み立てたり、予後の判断をおこなったりをするよね。

あとは、心身ともに疲労困憊なのにとにかく頻繫に笑っている人ような人がいるんだ。
疲労困憊だけどなんとか動かなくてはいけないと、心火を高ぶらせている状態なんだけど、その場合には心火を休ませるような労わるような処置を考えるよね。

先生は実際に診たことが無いからあくまでも理論的な推測だけれど。。。
「心火」がしっかりすることで礼儀正しさが生まれるということは、礼儀正しくない行いをしてばっかりいる人、法律に触れる触れない関係なく良いとはいえない行いをする人は、もしかすると心火の働きに問題を生じているのかもしれないね。
チョビ
それじゃ、今回の礼儀正しいとかっていうことはどうなの?
すね先生
世の中には色々な人がいるのはチョビもモーもわかっていると思うけれど、ちゃんとして礼儀正しいとは違う感じの、しょっちゅう申し訳なさそうにしていたり、頻繫に謝りながら頭を下げていたりする人がいるんだ。

それが問題ではない場合もあるし、直接体の不調と繋がっていない場合もあるけれど、鍼療していくことでその頻度が減ったりして、それまでよりも逞しい感じになる方もいるよね。
チョビ
へー、そんな人がいるんだねー
モー
すね先生の鍼灸院には、心の不調を抱えた方が多くいらっしゃるだけあって「心火」にトラブルを抱えた方も多いのでしょうね。
すね先生
しょっちゅう誤っているとか、笑ってばかりいるとか、
病とは全然関係ないと思ったりするだろうけど、東洋医学ではそういった状態もお体を知るうえでとても大切な情報なんだ。

 

健康の知恵
「心の不調の音がする」- 心火編⑥ -のまとめ

 

  • 心火の性格は「礼儀正しさ」
  • 性格や癖、病とは全然関係ないと思うことも東洋医学ではとても大切な情報
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>「健康」の大切さを理解しているということ

「健康」の大切さを理解しているということ

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