鍼灸は「逆子」を直すもの?
メディアで「鍼灸」の話題が取り上げられる中で、
「鍼灸」と「逆子直し」についての話題を目にすることに、妊婦さんを日頃鍼療する鍼灸師として驚きをもってみています。
また実際に「逆子ちゃん」と先生から告げられて
慌ててネットを検索し行動する中で、
「鍼灸による逆子直し」について知った方もいらっしゃることでしょう。
今回は
「鍼灸」と「逆子ちゃん」について、改めて鍼灸師としての私の考えなどをまとめてみたいと思います。
鍼灸と逆子ちゃん
お医者さんのご意見
先日、Twitterを見ていたら
フォローをしている産婦人科の先生経由でこの様な投稿を見付けました。
さて少し時間ができたので、ちょっとだけ胎位異常と鍼灸の効果について調べてみました https://t.co/H6tATkBcmA
— もるー (@quo_vadis0331) 2019年2月28日
とある産婦人科の先生がツイートされた内容なのですが
何回かに分けて、逆子直しに対する鍼灸の効果を論文のデータを見ながらお考えを述べています。
結論としては
いくつかの論文を見ての判断として
ざっと見る限り質の高いエビデンスは得られていません。
現段階での胎位異常に対する鍼灸の介入効果は「やってもいいけど効果があるかはわからない」と判断します
もるー (@quo_vadis0331) さんのツイートから引用
秩父唯一の産婦人科医院である
岩田産婦人科医院さんにおいては
逆子直しに良さそうなものを書いたプリントをお配りはするものの、横になる向きのお話をされるくらいで、具体的お話はされていません(患者さんのお話によると)。
色々な産婦人科の先生にお話を伺った訳ではないですが、
ほとんどの先生が
- 積極的に勧めないものの情報だけ参考までに教える
- ダメとは言わないけど、効果があるかは分からない
その様なスタンスではないかなと思います。
色々意見があるとは思いますが
私の考えとしては、「逆子に鍼灸が有効です!」と、医師が積極的に勧めないのは当然だと思います。
なぜ積極的に「逆子に鍼灸が有効」と言わないの?
このブログでも書いてきましたが、
東洋医学に対比する形で表現される「西洋医学」、「現代医学」というのは、しっかりとした「科学的な根拠(エビデンス)」によって構築されることで、等しく安全に医療を受けることが出来ます。
ですが
これまでの記事にもあるように
鍼灸などの東洋医学は、そもそも異なる東洋思想という思想のもと、医学として発展し、二千年以上の経験によって構築されてきたものです。
加えて
「鍼灸」の施術の仕方は統一されたものではなく、
鍼灸を現代医学に応用して筋肉や神経に刺激する先生もいます。
体中に何十本もの鍼を刺したままにする先生もいます。
私の様に鍼の刺入がとても浅く、皮膚に当てるだけ時もある様な先生もいます。
それこそ、1、2ヶ所にしか鍼をしないという先生もいます。
そして何よりも「なぜ鍼灸で体を変化するのか」。
「鍼灸の有効性、原理」が(少ししか)分かっていません。
それだけ分からないことが多く、
先生によってやり方が全然異なるものに対して、「科学的根拠(エビデンス)」によって安全に医療を提供している医師が、「逆子に鍼灸良いよ!」と簡単に勧められるわけがないと私は思います。
産科の医師の方々は、
逆子ちゃんのことも気にかけていると思いますが、どの様な形でも母子ともに無事出産を終えることを考えて全力で向き合っていることと思います。
逆子ちゃん直しの考え方
ここからは、
日頃妊婦さん、逆子ちゃんを診てきて、一鍼灸師として私が感じていること、考えていることを綴っていきたいと思います。
これまで雑感ブログにおいて
妊婦さんに対する対応や、逆子ちゃんとの向き合い方について何度か綴ってきました。
まだご覧になっていない方は、リンクを貼っておきますのでご覧ください。
雑感ブログ:『鍼灸師として妊婦さんを診せて頂くということ。』
「鍼灸」×「逆子」におけるポイント
鍼灸における逆子直しにおいて大切なことは
「鍼灸で逆子を直さない。」ということだと、最近は思っています。
「逆子ちゃんを直したいのに直さないって矛盾してるじゃん!」と思った方もいらっしゃるかと思います。
雑感ブログでも近いことを綴ったことがありますが
鍼灸における逆子直しのポイントは
鍼灸はあくまでも「母体(お母さん)」の、体の状態(東洋医学用語的には気血の巡り)を良くしているだけだと思っています。
そして、
母体の状態が良好になったことで、
結果的に、
胎児にとってより居心地のよい胎位「頭位」に落ち着くのを手伝う。
「逆子が直ることがある」のだと考えています。
ですから
「母体の状態を整えている。」というのは正しいですが。
「鍼灸で逆子を直している。」というのは、
間違ってもいないし、正しくもないのかなと。
少し話が脱線しますが
「帝王切開は悪い事。」
「逆子ちゃんはいけないこと。」
の様に思っているお母さんがたまにいらっしゃいますが
決してそのようなことはありません。
逆子ちゃんであることも、その子にとってはその体勢が一番落ち着く体勢だったのでしょう。
→原因としては、母体の心身の疲労を考え、出来れば早い段階で鍼と灸をしたいところです。
「帝王切開」もお母さんは傷のことが心配になりますが、
状態を管理しながら、短時間で子供を取り上げることが出来るので、子供にとってはとても優しい出産の形とも言えるのではないかと思っています。
逆子直しで鍼灸を受ける注意点
今回は逆子直しの注意点ではなく、
逆子直しで鍼灸を受けた時に、私が考える注意した方がよいと思うことの一部を箇条書きで綴りたいと思います。
- 鍼が痛い、お灸が熱い
- 鍼灸を受けるとお腹が張る、固い
- 足に汗をかく
- 鍼灸師が無知(そもそも妊婦さんの体ことをあまり知らない)
上の3つは、赤ちゃんの事、母体の状態を気にせず、無理に逆子ちゃんを直そうとしている場合。
そして一番下は説明するまでもないですが、
妊婦さん(母体)という慎重に体の状態を確認し、短時間で施術しなくてはいけない状況において、鍼灸師が無知というのは大変危険です。
証明することは難しいかもしれませんが、それらが原因で母体に負担をかけた場合に「切迫早産」等につながりかねないと私は考えています。
ただ
大変経験があり、ただ無口で色々お話してくれないという先生もいらっしゃるかと思います。
そういった事を含めても、妊婦さんを診るということは、それなりに私たち術者と患者さんとの信頼関係が必要です。
「不安になっていること。」
「気になっていること。」があれば、遠慮なく私たち鍼灸師にもご質問頂いて結構だと思います。
経験豊富な良い先生であれば、嫌な顔せず喜んで質問を受けてくださると思います。
鍼灸は「逆子」を直すもの?のまとめ
まとめ
- 科学的根拠(エビデンス)に基づいてお話する医師からすれば、「逆子直し」において不明な点が多い鍼灸はおススメしにくい。
- 鍼灸はあくまでも「母体」の、体の状態を良くしている。
そして、結果的に「逆子が直る」ことがある。 - 無理に直そうとすると体に負担をかける場合がある
- 信頼できるか確認する為にも、「気になる事」はなんでも鍼灸師に質問してみる