鍼灸師が「妊娠」を支える『産後うつ』

お母さんにとっても、子供にとって『皆で支える意識』

鍼灸師が「妊娠」を支える『産後うつ』

 

先日、Twitter上でこの様な記事を目にしました。

毎日新聞社さんの医療系コラムの1つです。

記事のタイトルは「産後うつ病のサインを見逃さないで」。

 

「うつ病」をはじめとした心の病を抱える方は、仕事環境の変化や、生活環境の変化なども影響し増加傾向にあります。

厚生労働省の資料をみると、平成11年から3年ごとの調査によると年々増加し、今から5年前の平成26年では「約392.4万人」と言われます。

当院のように「心」や「体」を1つとして診る、古典的な考え方で施術を行う鍼灸院でも、そういった「心」に病を抱えた方の来院はごく当たり前の様にいらっしゃいます。

 

今回は、鍼灸師として「妊婦さん」「うつ病など心の病を抱えた方」、そして「産後うつ傾向の方」と向き合っている者としての思いを綴りたいと思います。

 

「うつ」の芽を摘む

 

毎日新聞の記事の中で、「産後うつのはっきりした原因はわかっていない」とあり「発症リスクの高い人」というのが列挙してあります。

鍼灸師として、妊娠前・妊娠中・産後と通じて様々なお話を伺い、お体を診る中で、東洋医学の視点から「うつ」の小さな芽は比較的簡単に見つけることができます。

「うつ」など、心の病を抱える方を日常的に診ているので当然と言えば当然ですかね。

 

「広義なうつ」と「産後うつ」

 

「うつ」のなりやすさというのは、「環境」は勿論「体質」や「心理傾向」などもあります。

ただ、「うつ」と「産後うつ」とでは少し異なる点が場合があります。

 

皆さんは「産後クライシス」という言葉を耳にしたことがありますか?

以下のリンクは

産後クライシス」についてまとめられた記事です。

【助産師監修】産後クライシスを引き起こす原因と対処法

 

産後クライシスとは「産後2年以内に夫婦の愛情が急速に冷え込む状況」と言われます。

その背景には「産後うつ」の原因と近いものがあります。

「産後クライシス」の原因には

「産後の体調不良」「ホルモンのバランス崩れ」などが言われます。

「産後うつ」において、これら「産後の体調不良」「ホルモンのバランスの崩れ」も、十分心のバランスを崩す「うつ」の小さな芽だと言えるでしょう。

それは、広義な意味での「うつ」と「産後うつ」の違いでもあるでしょう。

 

妊娠期、産後の方を診て注意している事

 

このように妊娠中、産後特有の体の状態に対しては、「鍼灸」で体を整えることにより「うつ」の小さな芽を摘んでいきます。

また、体調管理の視点、特に「栄養成分」という視点で注意を促していることがあります。

それは「鉄分」の不足です。

 

「鉄」と「産後うつ」

 

妊娠中は、胎児の発育の為に多くの栄養、「鉄」を胎児に供給する必要があります。

加えて、お母さんの血液量、赤血球量が増えるために多くの「鉄」を必要とするために、「貧血(鉄欠乏性貧血)」になりやすいです。

また、出産時に出血が予想される場合や、帝王切開時に出血が予想される場合に「自己血輸血」を行う必要がある場合にも多くの「鉄」を消費します。

貧血症状があればもれなく鉄剤が処方されますが、症状がなくとも鉄剤が処方されるケースもあります。

この様に、妊娠中は「鉄」不足による貧血が起こりやすいのですが、引き続き産後も「鉄」不足を起こしている場合には、「産後うつ」のリスクが上昇するという調査結果があります。。

 

 

「鉄」と「うつ」の関連性は以前から言われていて、2017年にはこの様な書籍も出版されています。

(気になる方は読んでみてください。)

『うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった』

 

「鉄」不足は、鍼灸を行うことで直接補給することはできませんが、これらの知識を備え、鍼療のたびにお話させていただくことで、鍼灸師として「妊娠中」そして「産後」のお体を支えるとともに、「産後うつ」発症のリスクを減らせると考えています。

 

手を伸ばすことが出来ない難しさ

 

「産後うつ」に記事のなかで以下の1文があります

周囲に協力を求め、頑張りすぎない

 

基本的に、家族や様々な相談窓口を積極的に利用し、自分1人で抱え込まないようにすることが大切です。

それこそ今の時代では、TwitterなどSNSを介して、同じ悩みを持つお母さん同士が相談や情報交換していることも少なくないでしょう。

ですが、現実問題としてなかなかそういった事に頭が回らない、出来ないことで「産後うつ」が悪化してしまう場合が多いと感じます。

「産後うつ」という状況になってしまった方は、「そもそもそれらが満足に出来ないから、今こうなってる。」という方も少なくないでしょう。

 

「悩めるお母さん」に対し周囲が手をとる

 

育児の中心となる「お母さん」は常に頑張っています。

心身ともにボロボロになっても子供のために頑張っています。

それこそ「頑張り過ぎ」なくらいどのお母さんも頑張っています。

 

日頃、そんなお母さん達と鍼灸を通じて向き合っているなかで、どうにもならなくなってしまう前に少しでも早く手を伸ばし、周囲の人に力になってもらう事とともに、ただでさえ頑張り過ぎているお母さんに、より頑張って手を伸ばしてもらうのではなく、その姿に気づき、周囲から手を取って欲しいと感じます。

 

鍼灸師としてのもどかしさ

 

メールや電話などを通じて、お問い合わせやご相談は積極的に受付ております。

それこそ、鍼とお灸で体の状態を整えながらであればなお宜しいかと思います。

ある程度の範囲であれば困っている方の手を取ることができますが、そうやって手をとることが出来た方はほんのごく一部でしょう。

 

地域の保健所、保健センター、子育て支援センターの専門員の方であれば、積極的に電話を行い、直接お宅を訪れるなどして話を聞くことができるでしょう。

ですが、そういった方の力になりたいという思いと、力になれる技術があっても鍼灸師には難しいです。

患者さんを通して、困っている方のお話を伺うことがあっても、ただもどかしい気持ちになります。

そもそも鍼灸師に対して、産後の体や、子供のこと、育児のことなどを相談しても良い職業だと思って頂けていないのもあるでしょう。

鍼灸師としてもどかしさがありますが、こうやって記事を書いたり、来院された患者さんに対し様々なお話していくことで、鍼灸師がより親しみをもって体のこと、育児のこと、健康のことを相談できる対象になっていくなかで、「産後うつ」に悩まれる方、日々の育児に疲弊している方の支えてとなっていきたい思いです。

 

『鍼灸師が「妊娠」を支える『産後うつ』』のまとめ

  • 「産後の体調不良」「ホルモンのバランスの崩れ」も「うつ」の小さな芽
  • 「鉄」不足により「産後うつ」のリスクが上昇する
  • 家族や様々な相談窓口を積極的に利用し、自分1人で抱え込まないようにすることが大切
  • 心身の調整とともに、体のこと、育児のこと、健康のことは積極的に鍼灸師に相談して頂いて大丈夫
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「健康」の大切さを理解しているということ

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