鍼灸家として不妊を考える ⑦
『湯液(漢方)』 という選択
本記事は、雑感ブログ「秩父山育ち。スイーツ大好き鍼灸師がやってるブログ。」にて投稿していた、「不妊へのアプローチ~鍼灸家として考える~」の続きです。
※この内容は不妊で悩まれる方全てに共通ではありません。
【外】の「鍼灸」と【内】の「湯液(漢方)
以前、記事にも綴ったように「鍼灸」と「漢方(「湯液」)」は、同じ東洋思想の流れをくむ「東洋医学」。
過去記事:東洋医学とは
「鍼灸」が「鍼」と「灸」を用いて、体の【外】から体を整える(「気血」を整える)東洋医学であれば、「漢方(湯液)」は【内】から体を整える(「気血」を整える)東洋医学です。
そして「鍼灸」は『鍼灸師』が、「漢方(湯液)」は『薬剤師』(漢方専門)が、その役目を担います。
※医師はどちらも行うことが可能ですが、考え方の基本が「東洋思想」ではない場合があるので今回は除外してご説明しています。
「鍼灸師と薬剤師の説明が同じ」というあるある
医師と鍼灸師との間では、「現代医学」において医師のお話を鍼灸師が理解することはできます。それは、鍼灸師が国家資格を取得するうえで必要となり、患者さんと会話するうえでも大切な共通言語だからです。
ですが、「東洋思想」を基礎とする「東洋医学」の言語は、「東洋医学」が好きで学んでいる一部の医師や、一部の一般の方を除いて、すぐに理解することは難しいです。
「科学的根拠」、「エビデンス」が重要である「現代医学」が世界において医療のスタンダードであり、「馴染みが無い」というのも理由の1つです。
ただ「東洋医学」に属する「鍼灸」と「漢方(湯液)」との間では、多少説明の仕方に違いがあっても、「鍼灸師」と「漢方専門の薬剤師」双方に話を聞いたら「同じ説明を受けた。」ということがしばしばあります。
それは、「東洋医学」の基礎である「東洋思想」を通じて、同じように体を理解し、体を良い方向に導こうと考える為です。
「良さを活かしあう」視点
患者さんから
「漢方はどうなんですか?」
「鍼灸と相性はいいんですか?」と質問を受ける時があります。
そんな時は
「両方とも同じ東洋医学で、同じように体を考えることから、上手に使えればとても良いですよ!」と答えます。
ポイントは「上手に使う」ということです。
漢方の大まかな説明
詳しくは薬剤師さんに直接お話して頂くのが一番ですが、とても簡単に「漢方」について触れたいと思います。
鍼灸には大きく分けて
「現代医学的に行う鍼灸」と「古典的(東洋思想に沿って)行う鍼灸」があります。
そして漢方にも大きく分けて
「保険適用の漢方」と「保険適用外の漢方」とがあります。
「保険適用外の漢方」にも、薬局で購入できる「効能を高くした(成分濃度の多くした)漢方」と、医師もしくは薬剤師から「調合してもらい自分で煎じて飲む漢方」とがあります。
漢方の違い
一般的に「漢方」として認識され、飲まれている多くのものは「保険適用の漢方」でしょう。
大まかな違いとしては
- 「保険適用の漢方」:万人が飲みやすいもの=十分な効果が得られない場合がある。金額(自己負担)が安い。
- 「保険適用外の漢方」:効能が高い分「合う」「合わない」の差が多きい。金額(自己負担)が高い。
ちなみに
「保険適用外の漢方」の大きな差は、飲むための「労力」が圧倒的にかかります。
「上手に使う」ということ
「東洋医学」の優秀性は、「経験医学」(実際に体に試しながら経験的に積み上げられた医学)として培われた歴史が物語っています。
ですが、科学的根拠によって構築された「現代医学」と異なり、「東洋医学」は鍼灸も漢方も主観的な見方が強く、施術する側の技術、センス必要です。
漢方を処方するにおいて、「保険適用」と「保険適用外」との効能差もあり、「的確な体な診察」をして頂き、体に合った「漢方の種類と量」を上手に飲むことが大切です。
「鍼灸」は【外】=【陽】から、「漢方」は【内】=【陰】から。
【陰陽】で体を整えるということは、東洋医学のアプローチとしては理想的だと考えます。
不妊に「鍼灸」「漢方」の良さ活かす
「不妊」「妊活」においても、鍼灸や漢方を上手に用いることが大切だと考えます。
「鍼灸と漢方どちらが良いの?」と問われたら「どちらも良いです。」と答えるでしょう。
強いて、私見で「鍼灸」「漢方」双方の特に良いところを簡単に言うならば
- 「鍼灸」:全身のバランスを整えるのが上手
- 「漢方」:不足を補うのが上手
東洋医学の視点では「全身の気血が過不足を起こし、循環のバランスが乱れることが問題である。」とまず考えます。
そして「鍼灸」も「漢方」も、それぞれのアプローチで「気血の循環」を整えます。
「鍼灸」は外側から全身に対して施術を行うことが出来るので、効率的に全身の循環を整えるのが上手。(イメージとしては、交通渋滞を整えるのがうまいお巡りさん。)
「漢方」は口から栄養成分として摂取し、その成分を全身に巡らせることから、「不足を補う」ことが上手だと思っています。
鍼灸が不足を補うことが苦手。漢方が全身の循環を整えるのが苦手。ということではなく、「不妊」「妊活」において「鍼灸」「漢方」双方の良さを相乗的に使えると理想的ですね。
鍼灸家として不妊を考える ⑦
『湯液(漢方)』 という選択のまとめ
- 「鍼灸」は「鍼と灸」を用いて、体の【外】から体を整える東洋医学「漢方(湯液)」は【内】から体を整える東洋医学
- 「不妊」「妊活」において「鍼灸」「漢方」双方の良さを相乗的に使えると理想的