「陰陽」って変化するの?
前回から始まった
「すね先生教えて! 「東洋医学」のお話をしよ」
前回は身の回りにある「陰陽」に分けられるもの、性質等のお話でした。
今回は
その「陰陽」が、そもそも変化するのか、その際にはどの様な変化をするのか、所長のすね先生とアシスタントの2匹のネコ達との会話を通じて、より理解を深めて頂ければと思います。
前回の復習
では、「陰」と「陽」にはどの様なものがあったかな?
あとは男が「陽」で女が「陰」。
だからすね先生は「陽」で私たちは「陰」でしょ!
それなら、チョビとモー、「陰陽」で別けたらどっちがどっちかな?
チョビまだ理解しきれていないようだね。
まだ理解しきれていないチョビのために、「陰陽」をいくつかの働きにまとめて表にしたから見てみてね。
< 方向性 >
陽 | 陰 |
上 | 下 |
左 | 右 |
外 | 内 |
中心 | 末端 |
出 | 入 |
昇 | 降 |
浮 | 沈 |
凸 | 凹 |
< 自 然 >
陽 | 陰 |
火 | 水 |
明 | 暗 |
昼 | 夜 |
朝 | 夕 |
春・夏 | 秋・冬 |
南・東 | 北・西 |
熱・温 | 寒・涼 |
< 人 間 >
陽 | 陰 |
男 | 女 |
幼 | 老 |
外側 | 内側 |
脊背 | 胸腹 |
上部 | 下部 |
六腑 | 五臓 |
衛 | 営 |
気 | 血 |
< 病 気 >
陽 | 陰 |
躁(さわ)がしい | 静か |
強盛 | 衰弱 |
温熱 | 寒冷 |
乾燥 | 湿潤 |
亢進 | 減退 |
急性 | 慢性 |
さて!
今回はこの陰陽が互いに対立しているのは分かったけど、それは絶対的ではなく「変化している」というお話だよ。
「変化してる」ってどういうこと?
自然界の変化では?
昼が夜みたいに暗くなることは無いし、夜が昼の様に明るい事なんて無いから、「陰」と「陽」が入れ替わることはないんじゃない?
でもどうだろ?
夏と冬では外が明るい昼と、外が暗い夜とは一緒かな?
「夏至」の時季が一番昼が長く、「冬至」の時季が一番夜が長いです。
モーの言うように、夏至、冬至は互いに昼、夜の一番長い時期。
冬至が過ぎると段々夜が短くなり、春分を境に昼の方が長くなる。
そして、夏至を過ぎると段々昼が短くなり、秋分を境に夜の方が長くなる。
つまり、「陰」と「陽」の中にも「陰陽」があるということですか?
この様に季節の変化からイメージすると分かりやすいけど、「陰陽」は時間の変化とともに変化しているんだね。
そして「陰」と「陽」はそれぞれをまた「陰陽」で別けることが出来て、ある程度のところまで変化が進むと、反対の働きに転化するんだ。
古典にはこういった文章があるんだよ。
陰中有陰、陽中有陽。平旦至日中、天之陽、陽中之陽也。
日中至黄昏、天之陽、陽中之陰也。
合夜至鶏鳴、天之陰、陰中之陰也。
鶏鳴至平旦、天之陰、陰中之陽也。
故人亦応之。
陰中に陰あり、陽中に陽あり。
平旦より日中に至るは、天の陽、陽中の陽なり。
日中より黄昏に至るは、天の陽、陽中の陰なり。
合夜より鶏鳴に至るは、天の陰、陰中の陰なり。
鶏鳴より平旦に至るは、天の陰、陰中の陽なり。
故に人も亦(ま)たこれに応ず。
出典:黄帝内経「素問」
編現代語訳「黄帝内経素問」上巻から引用
この文章の続きを読んでみよう。
人の体だとどうなの?
夫言人之陰陽、則外為陽、内為陰。
言人身之陰陽、則背為陽、腹為陰。
言人身之蔵府中陰陽、則蔵者為陰、府者為陽。
肝、心、脾、肺、腎五蔵皆為陰。
胆、胃、大腸、小腸、膀胱、三焦六府皆為陽。
夫れ人の陰陽を言わば、則ち、外陽たり、内陰たり。
人身の陰陽を言わば、則ち背陽たり、腹陰たり。
人身の蔵府中の陰陽を言わば、則ち蔵なる者は陰たり、府なる者は陽たり。
肝、心、脾、肺、腎の五蔵は皆陰たり。
胆、胃、大腸、小腸、膀胱、三焦の六府皆陽たり。
所以欲知陰中之陰、陽中之陽者、何也。
為冬病在陰、夏病在陽、春病在陰、秋病在陽。
皆視其所在、為施鍼石也。
故背爲陽、陽中之陽、心也。
背為陽、陽中之陰.肺也。
腹為陰、陰中之陰、腎也。
腹為陰、陰中之陽、肝也。
腹為陰、陰中之至陰、脾也。
此皆陰陽表裏.内外、雌雄、相輸応也。
故以応天之陰陽也。
陰中の陰、陽中の陽を者を知らんと欲するゆえんの者は、何ぞや。
冬病は陰に在り、夏病は陽に在り、 春病は陰に在り、秋病は陽に在るが為なり。
皆其の在る所を視て、為に鍼石を施すなり。
故に背陽たり、陽中の陽は、心なり。
背陽たり、陽中の陰は、肺なり。
腹陰たり、陰中の陰は、腎なり。
腹陰たり、陰中の陽は、肝なり。
腹陰たり、陰中の至陰は、脾なり。
此れ皆陰陽・表裏・内外・雌雄、相い輸して応ずるなり。
故に以て天の陰陽に応ずるなり。
出典:黄帝内経「素問」
編現代語訳「黄帝内経素問」上巻から引用
背中は陽。お腹は陰。
臓腑で別けると五臓(肝、心、脾、肺、腎)は「陰」。
六腑(ろっぷ)(胆、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦)は「陽」。
冬の病は陰中の陰。夏の病は陽中の陽。
春は陰中の陽。秋は陽中の陰。
鍼治療はこういった病の所在を考えて施術することが大切なんだ。
胸は上にあって陽だから心と肺は「陽」。
(陽中の陽は心。陽中の陰は肺。)
お腹は下にあって陰だから肝、脾、腎は「陰」。
(陰中の陰は腎。陰中の陽は肝。最も深いところにある脾は陰中の至陰。)
これらは全て陰陽の表裏、内外、雌雄の相互関係で、自然の「陰陽」の変化と同じだって書いてあるんだ。
頭が痛くなってきたよ。
細かいことはまたこれから勉強していきますが、人の体も自然と同じように陰陽を当てはめることができて、自然の「陰陽」の変化を診ながらすね先生が鍼をしていることが分かりました。
丸暗記する必要はないけど、「陰」と「陽」の性質を少しでも覚えていてくれるといいな。